雨 樋

建物調査(雨樋)

屋根に降ってきた雨は瓦を伝って軒樋に流れ込みます。
軒樋の雨水は勾配の低い方に流れて集水桝に集まり竪樋を通って、最終的に排水溝へと放出されます。
この雨水を排水する事が雨樋の役割になりますが、雨水の排水経路に不具合や障害などがあると、正常に雨水が排水されません。

雨水が正常に排水されない原因としては、
  • 軒樋に障害物が溜まる。
  • 軒樋の許容量を超える雨水が通過する。(設計ミスか施工ミス)
  • 軒樋の勾配(傾斜角度)が安定していないので滞水する。
  • 軒樋の固定金具が外れているか変形している。
  • 軒樋が破損している。
  • 集水桝に障害物が溜まる。
  • 集水桝の数が少ない。(設計ミスか施工ミス)
  • 竪樋が障害物で詰まる。
  • 竪樋に破損や損壊個所がある。
  • 竪樋から排水溝までの配管が壊れている。
  • 等が、挙げられます。

また雨樋がきちんと役割を果たしていないと、雨漏りの原因になることもあります。
梅雨や台風の後には雨樋のチェックをするように心掛けてみて下さい。
因みに、台風や地震などの影響で雨樋が破損した場合には、火災保険で賄える事があります。詳しい内容や条件などは、御自身が加入している火災保険の約款や契約内容を御一読して下さい。

1:軒 樋

軒樋は軒先に設置されている雨樋のことです。屋根を流れ落ちてきた雨水が直接軒下に落ちないように受け止める為に取り付けられています。
しかし同時に、屋根に落ちているゴミや枯葉も軒樋に流れ込んでしまいます。

軒樋に詰まりやすい障害物としては、
  • 枯葉や小枝や花びらなど(特に近くに高い木がある)
  • 漆喰の破片や流出した葺き土
  • 飛来物や落下物(ボールやゴミなど)
  • 鳥の巣の構成物(藁や枝)
  • 小動物や昆虫の死骸や糞
  • 等が挙げられます。
軒樋に障害物が詰まっていない場合でも、
  • 雨量に対して軒樋の長さや大きさが足りないので、降雨時にオーバーフローする。
  • 軒樋が変形してしまっている。(経年劣化・寒暖の変化・堆積物の重量など)
  • 軒樋の留め金具が外れたり壊れたりしている。
  • 軒樋の勾配(傾斜角度)が緩く、雨水が流れにくい。
  • 樋が破損している。
  • 等の場合には、修理や対策が必要です。
軒樋の中を見る機会はなかなかないかも知れませんし、2階の屋根に上るのが不安だと思う方は、お気軽に弊社までご相談下さい。
土砂や瓦の破片
軒樋
軒樋に苔
軒樋に苔
軒樋に発苔
軒樋に滞水
軒樋に障害物
軒樋に滞水
軒樋に滞水
雀口漆喰の破片が散乱
軒樋に滞水

2:留め金具

雨樋は直接軒先に設置されている訳ではなく、軒先に固定させる為に留め金具が使用されています。
この留め金具が何らかの原因で外れたり破損したりしてしまうと、雨樋が安定して雨水を 排出出来なくなってしまいます。

雨樋から金具が外れたり破損したりするのには、下記のような原因が考えられます。
  • 雨水が流れる際の重量や振動に、雨樋や金具が耐えられなくなり外れる。
  • 雀やコウモリが軒樋に乗る際にかかる荷重や振動で金具が外れる。
  • 雨樋や金具の経年劣化により、弾性力が低下して徐々に衝撃に耐えられなくなる。
  • 人が屋根に登る際に掛けた梯子の影響で、金具が外れてしまう。
  • 雨樋に溜まった漆喰やゴミや雪などの影響で、樋が変形して金具が外れる。

留め金具の破損は明らかに雨樋の劣化を促進させてしまいます。一般的な雨樋の耐用年数は約10年です。(温度変化・使用環境・設置条件・施工方法・素材の種類等によって違います)
被害が拡大する前に補修か交換を施すようにして下さい。

軒樋の支持金物
軒樋の支持金物
軒樋の留め金
発錆

3:継 手

軒樋の継手
出隅役物
塗料の剥離
波打ち変形

4:谷板金(谷樋)

屋根と屋根の取り合い部位で、谷になっている部分の名称です。
谷部に加工した銅板を設置することで、雨水が流れる経路として使われ、谷板金や谷樋と呼ばれています。(銅板は加工しやすく谷板金として使われやすい)
谷板金は雨水が集中する場所なので、定期的な点検が必要な部位です。
特に注意するべき点は、

  • 谷板金と瓦の重なり幅(狭いとオーバーフローする可能性がある)
  • 谷板金の劣化や損傷の状況(銅板は穴が開きやすい)
  • 障害物の有無(鳥の巣や葺き土や漆喰など)
  • 周辺の瓦の浮きや取り付具合
  • 谷板金の下の防水状況(小屋裏からも確認が必要)
  • 等をチェックしておくと安心です。

谷板金
セメント瓦
葺き土

5:竪樋(縦樋)

軒樋で集められた雨水を建物下の地面まで運ぶために、垂直に設置された筒形の雨樋を竪樋と呼びます。
従来は丸型の竪樋が主流でしたが、最近は角形(四角刑~八角形)の雨樋が増えつつあります。
丸型の樋との大きな違いは、下記の2点です。

  • 角形の竪樋はゴミが詰まりやすいが、多量の水を排出出来る。
  • 丸型の竪樋は角形タイプより排出可能な雨量は少ないが、ゴミが詰まりにくい。

円柱型と角柱型の雨樋を設置する際は、建物の立地条件や予算や使用環境などを考慮して選択して下さい。
竪樋
竪樋の支持金物
竪樋
竪樋に塗膜
鎖樋

6:集水器

軒樋で集めた雨水を竪樋に流し込む為の枡の役割を担うのが集水器です。
集水器のゴミが詰まると排水に多大な影響を及ぼしてしまいます。
しかしいくらゴミが溜まらないように雨樋用ネットや落ち葉留めのストレーナー等を設置しても、定期的に外して清掃しないと折角取り付けてあるゴミ止めの役割も果たせません。集水器や軒樋は定期的に清掃するようにして下さい。

稀に集水器と軒樋をコーキング剤などで固定してある住宅が存在しますが、集水器と軒樋を固定してしまうと、温度変化(寒暖の差)による樋の伸縮に対応出来なくなってしまいます。
軒樋と集水器の固定は、軒樋の変形や勾配の安定を損なう恐れがありますので注意して下さい。

集水器
障害物