小屋裏

小屋裏

小屋裏(屋根裏)の検査

小屋裏(屋根裏)には、人が入る事が少ないのであまり細かく検査や点検をしていない事が多いですが、家主が気づかないうちに雨漏りしたり害獣や害虫の被害に合っていたりする可能性があります。
また、経年劣化による木材の腐朽や損傷があったり、建築時の施工不良があったりするケースもあります。特に、住宅を建築した業者が既に廃業したり倒産してしまったりしているケースや、建物の築年数が20年以上の方には御勧めです。
住宅の塗り替えやリフォーム工事をする際には、小屋裏の点検や検査も是非御検討してみては如何でしょうか?

小屋裏の目視調査

小屋裏の状況を目視で調査する方法としては、一般的に下記のような項目が挙げられます。
  • 小屋組みの状況(施工不良など)
  • 棟木・母屋・軒桁・小屋梁・小屋束・火打ち梁・雲筋交い・野地板・垂木など
  • 断熱性能
  • 断熱材の種類・断熱の方法・断熱材の劣化・断熱材の厚さ・敷かれている状況など
  • 接合金物の状況
  • 金物の緩み・発錆・カビの有無・設置個所・接合方法・使用されている金物の種類など
  • 換気の状況
  • 換気の方法・障害物の有無・換気口の状態・換気口の大きさ・換気口の数量など
  • 雨漏りの有無
  • 木部の滲み・小屋裏から見える隙間 ・カビの発生など
  • 害獣や害虫の侵入の有無
  害鳥や害獣の巣の有無・害獣や害鳥の糞尿の有無・害獣による被害状況など

1:カビの発生

小屋裏にカビが発生する要因は様々ですが、一般的には夏場の結露が原因の場合が多いようです。
つまり、カビは毎年4月~7月頃に活発に活動します。
室内でカビの発生しやすい場所としては、

  • トイレ
  • 洗面所
  • 浴室
  • 台所
  • タンスや食器棚や冷蔵庫などの裏側
  • ベッドや布団の下
等の、湿気が溜まりやすく空気の流れが悪い場所で繁殖しやすいのです。

カビの繁殖条件としては
  • 一定の温度(20~35度が最適/0~40度で繁殖)
  • 一定の湿度(70%以上で活発化)
  • 酸素
  • 栄養(建材や埃や塵など)
  • が、あればどこにでも発生する可能性があります。

つまり一般的な住宅の建材であれば、どこにでもカビが発生する栄養があると考えられます。なかでも、カビは空気が流れにくく埃や塵が溜まりやすい場所に生えやすいので、室内以外の床下や小屋裏や壁内でも条件さえ整えば、カビが育ちやすい環境になってしまいます。

カビの対策には、
  • カビの発生場所の十分な換気を行い、通気性を上げる。(換気)
  • カビの発生場所を除湿器などで乾燥させる。(乾燥)
  • カビの発生場所と室内との温度差を減少させる。(結露防止)
  • カビを拭き取る。(清掃)
  • 防カビスプレーや防カビ剤を塗布する。(塗装)
  • 等が、挙げられます。
カビは建材だけでなく人体にも悪影響を及ぼしますし、カビが増殖して被害範囲が拡大してしまうと、除去や対策にも費用や時間が必要になってきますので、発見したら早めの対策を心掛けて下さい。
木材の貫入試験
木材の貫入試験
超音波リークテスト
木材の密度測定
土壁にカビが発生
棟木にカビ
垂木にカビ

2:金物の劣化

小屋裏の木材を接合する際には接合金物を使う事が多いですが、折角の接合金物も十分な状態で使用されていないと効果も低下してしまいます。
特に一定以上の湿度(60~80%以上)がある状態で、室内との温度差(5~10度以上)が激しい環境だと結露が起きやすいので注意が必要です。
結露を防ぐには十分に小屋裏の換気をおこない、なるべく温度差が生じないように心掛けることが大切です。

小屋裏の金物は
  • 適切な接合金物が使用されている。(種類)
  • 適切な個所に使用されている。(位置)
  • きちんと接合されている。(緩みや打ち損じ)
  • 健全な状態で使用されている。(錆やカビの発生)
  • 等をふまえてチェックしていく必要があります。
そこで、
  • 大きな地震の後には、金物の締め付け具合のチェックをする。
  • 地震などが起こらなくても3~5年に1度は定期点検をする。
  • ようにすると、早い段階で対処できるので費用面での負担も少なくてすみます。
くら金物に発錆
接合金物に発錆
接合金物の発錆
引き寄せボルトに緩み
金折金物の接合不備
鎹の施工不備

3:臍差し(ほぞさし)の状態

小屋束の凸部を母屋や小屋梁の凹部に差し込んで木材同士を固定する仕口の一種です。

横になる木材(水平になる木材)に穴を開けて、その穴に柱や束を差し込むことで、木材を安定させます。ほぞ穴を下まで貫通させる納まりと、途中までしかで貫通させない納まりがあります。貫通させない方が施工は簡単ですが、湿気が溜まり易くなるので木材が痛みやすくなる欠点もあります。

柱か束の施工不良
母屋と小屋束の接合不備
母屋と小屋梁の接合
小屋束のほぞ
母屋と小屋束の接合不備
棟木のほぞ穴
小屋梁に臍穴

4:継手(継ぎ手)の状態

継手は木材と木材を長手方向に繋ぎ合わせることです。
住宅を建築する際の木材の長さが足りない場合に、他の木材を継ぎ足して使用する為の手法です。一般的には母屋や梁や軒桁などで使用される事が多いです。
通常の住宅建築では2~4mの木材しか使用しないので、棟木や母屋や軒桁などは継手を 行います。
木材の接合部に金物を使用すると、金物が結露したときの湿気で木材が腐食する原因になってしまう事があります。しかし金物を使わない継手の場合は、結露が発生しにくく、ねじれに強い継手や引っ張りに強い継手など様々な手法が存在します。

継手の問題点として、建築当初にきちんと施工されていないと、下記のようになる可能性があります。
  • 屋根の変形や荷重の影響で、継手部位が外れる。
  • 木材の割れ(干割れではない)が原因で、貫通割れする。
  • 地震や不同沈下の影響で、外れやすくなる。
建築時に十分な乾燥木材を使用しなかった場合には、木材の干割れ(乾燥割れ)が発生する事があります。干割れが生じても木材自体の強度が下がる訳でないので、通常は問題ありませんが、継手や仕口の接合部から割れが発生している場合は、干割れが原因ではなく施工不良の可能性もあります。
母屋の継手
母屋の割れ
正常な状態
母屋の継手に隙間
正常な母屋の継手状態
干割れか否か
母屋の割れ
軒桁の継手の割れ
垂木の継手にずれ

5:仕口の状態

木材と木材を接合する際に角度をつけて、接合する手法のことです。
一般的には90度の角度で、『母屋と梁と小屋束』や『軒桁と梁』などを接合する歳に使われます。
T字型や十字型やL字型で接合される事が多いですが、寄棟の『大棟と隅棟』を接合する際にも使われます。

住宅の仕口個所は力が集中する個所でもあるので、許容範囲を超えた負荷がかかると崩壊や劣化の原因に繋がります。
仕口に問題が発生する原因としては、

  • 建築時の施工ミスや施工不良
  • 設計ミス(木材の間隔・木材の種類・木材のサイズ・金物の種類)
  • 地震の振動や不同沈下の影響で負荷がかかった。
  • 経年劣化で屋根の荷重が支えられなくなった。
  • 金物の発錆が原因で腐朽したり強度が下がったりした。
  • 等が、挙げられます。

欠損と不支持
束柱のみで支持
接合箇所に隙間
破断
小屋束の接合不備
小屋梁と小屋束の仕口

6:木材割れの種類

木材が割れるのには幾つかの理由や条件があります。
一般的に多いのは、
『木材の干割れ(乾燥割れ)』
です。
木を切った状態のときは、木に水分が多く含まれています。
その木材を住宅に使用する際にも、ある程度の水分が木材に含まれています。
そして年月が経過するにつれて、徐々に木材から水分が抜けていきます。つまり木材がどんどん乾燥していきます。乾燥することで木材の強度は上がりますが、乾燥することで木材に割れも発生します。この乾燥による割れを、干割れ(乾燥割れ)と呼びます。
干割れは住宅の構造上、特に問題はありません。しかし干割れの外観で不安になる方が多いのも事実です。

その干割れを防ぐ方法としては、
  • 住宅建材として使用する前に、十分な期間を費やして自然乾燥させる。
  • 最初に木材に背割れ(人工的な割れ)を入れて、他の個所での割れを生じなくする。
  • 強制的に木材を乾燥させる。(人工乾燥・機械乾燥)
  • 等が、挙げられます。

但、木材の干割れ以外の割れは非常に問題です。
例えば、下記のようなケースが考えられます。

  • 木材に許容範囲を超える負荷がかかった。(屋根の荷重・地震・不同沈下など)
  • 施工時に木材の加工に失敗したのに、その木材をそのまま使用した。
  • 釘やビスのサイズや施工位置を間違えたり、施工前に錐を使用しなかったりした。
  • 使用する木材を間違えた。
  • 施工ミス(小屋束の設置忘れ等)をしたので、他の木材に余分な負荷がかかった。

上記のような割れが発生した場合には、何らかの対策か補強を施さないと建物の劣化を早めてしまう恐れがあります。
干割れ
母屋の継手に割れ
留め釘による破断
隅棟木の裂け
留め釘の打損

7:電気配線の状況

電気配線を束ねて保管しておく場合は問題ありませんが、通電させて電気を使用した場合には電線の温度が上昇しますので注意が必要です。
電線を束ねたままの状態で通電すると、電線が密集している場所からの放熱がされにくくなり、ビニル被覆やケーブルが溶けてしまう可能性があります。
また電線には曲げても構わない角度が定まっているので、折り曲げた状態で使うのは危険です。その状態で使用すると、折り曲げた個所に熱が籠りやすくなってしまいます。
電線の折り曲げた状態や束ねた状態での使用は、発火や火災の原因にも繋がりますから、なるべく控えるようにして下さい。

配線(電線
配線(電線

8:断熱材の施工状態

住宅の断熱効果を高めるためには、きちんと断熱材が敷かれているかどうかが重要なポイントになってきます。
最近では、小屋裏を物置部屋や小部屋として有効活用する為に屋根断熱が増えつつあります。しかし、屋根断熱(充填剤による断熱)は、小屋裏(天井裏)に敷く断熱材より断熱性能が低いと言われています。
小屋裏にきちんと断熱材が敷かれていない場合は、内壁や床の断熱材もきちんと施工されていない可能性があります。
また断熱材には表と裏があるので、反対向きに敷いてしまうと効果が下がってしまいます。(一般的には文字が記載されている側が下になります。)
断熱材は劣化が激しくなると、あまり断熱効果を発揮出来ません。断熱材を20年以上しようしている住宅では、交換をした方が良い場合もあります。
室内の断熱効果が低いと感じている場合などには、サーモグラフィーや超音波を使った断熱調査をお勧め致します。

部分的な断熱欠損
断熱欠損
断熱欠損
断熱材の過剰敷き
断熱材が散乱
敷かれていない

9:施工不良

住宅を建築する上で、瑕疵や施工不良でも程度によって生じる問題には開きがあります。
中でも、
柱や梁の接合は非常に重要なポイントです。
この部位に施工不良があると、構造上の大きな問題に成り兼ねません。
特に地震や台風などの災害時に大きなトラブルを引き起こす可能性が出てきます。
「古い家だから仕方がない」とか
「今のところ問題が起きていない」とか
「建て替える費用が無いから我慢する」と
諦めてしまわずに、お気軽に御相談下さい。
また、小さな施工不良を放置しておくと、が大きな問題に発展してしまうこともあります。現状を把握する為にも家屋の診断や検査を定期的に行うと安心です。

水平と垂直測定
接合不備
接合されていない
小屋貫が接合されていない
瓦の先端が見える
野地板の破断
雲筋交い(振れ止め)の施工不備

10:釘の打ち損じ

桟瓦やスレート瓦を葺く為の野地板を垂木に固定する際に、留め釘の打ち損じが発生しやすいので注意が必要です。
職人さんによっては
「打ち損じた場合は打ち直すから大丈夫。」だとか、
「打ち損じたか否かは感覚で判断できるので心配ない。」と
言われる人もいますが、
完全に打ち損じた場合は分かるかもしれないが、斜めに打ち込んで垂木の中心から外れてしまった場合には気付かないことが殆どです。
また、打ち損じた釘は結露により発錆が起きやすい状態になるので、あまり放置しておかない方が安全です。
しかも打ち直しをしていないケースも多く、野地板や屋根瓦がズレてしまう原因にも繋がります。
長めの釘やビスで見えない個所を留める際には、木材探査機(鉄筋探知機)や電磁波探知機などを使い、予め墨出しをしてから施工すると正確に施工できます。

打損
接続釘の発錆
接続釘の打損
接続ビスの打損
留め釘の打損

11:各種調査用の機材

小屋裏で機材を使用して調査を行う方法としては下記のようなケースがあります。
建物の調査や検査に専用の機材を使用することで客観的なデータとして確認出来たり、目視では判断しにくい状況を把握出来たりするので、小屋裏の検査や調査の際に役立ちます。

 
  • 超音波探知機
  • 目視では判断できない隙間や空間を発見できる。
    漏水経路の特定などに役立つ。
  • 木材聴診器
  • 雨漏りの浸入経路を探す際や、木材に害虫が潜んでいるかの判断をする場合に使う。
  • 含水率調査
  • 木材に含まれている水分比率を測定する事で、雨漏り個所の特定や木材の腐朽状況など を判断出来る。
  • サーモグラフィー調査(赤外線調査)
  • 小屋裏の断熱調査や雨漏れ調査や配線の過熱状況などを判断する際に役立つ。
  • CCDカメラ調査
  • 人間が入れない場所や壁内の狭い空間等を調べる際に使用する。
  • 木材強度測定
  • 木材の腐朽状況や劣化状況を判断する場合に使用する。
  • 温度・湿度の計測
  • 室内や屋外や床下との比較が出来る。小屋裏の中でも場所毎に測定できる。
  • 結露調査
  • 結露計を用いて結露が起きそうな個所の特定や結露の状況を判断する。
  • 構造材の水平垂直調査
  • 建物の傾きや柱や梁の傾きを測定する。
  • トルクチェック
  • テストハンマー(打音ハンマー)を使用したり、測定機材を使用したりして『マーク法』『戻しトルク法』『増し締めトルク法』等の方法でして、ネジやボルトの締め付け状況を検査する方法。
 
含水率を測定
木材の強度を測定
トルクチェック
締め付け状況の確認
温度・湿度を計測
温度と湿度
小屋束の傾斜角度を測定
水平測定
木材の含水率を測定
含水率を測定

小屋裏の補強例

金物

桁の継ぎ手に短冊金物(㈱沢田工業/No22-1 CP-T)を施工、

束と桁の接合に角金物(㈱沢田工業/No38-1 CP-T)を使用。

制震金具ガルコン

制震金具ガルコン(イケヤ工業㈱/GL-Ⅶ PAT)を大梁と小屋束の接合に使用。

 

SRF包帯補強(構造品質保証研究所㈱/SRF250 SRF30)により、 極脆性向上及びせん断補強工事を施工。
(既設の鎹は撤去致しました。)
小屋裏補強後

小屋裏補強後の画像。