基 礎 

基 礎

建物基礎

基礎部分は建物を支える大変重要な役割があります。
屋根や外壁の塗装を施す際には必ず基礎の調査を行い、状況に応じて適切な処置や対策を施しましょう。
住宅の基礎部分は下記のように分類されます。

  1. ベタ基礎(床下がコンクリートに覆われている)
  2. 布基礎
  3. ブロック基礎
    有筋基礎(コンクリート基礎に鉄筋が入っている)
    無筋基礎(コンクリート基礎に鉄筋が入っていない)
  4. 玉石建て基礎(伝統工法で玉石の上に土台を乗せている) 1971年の建築基準法改正で布基礎が義務化されたので、それ以前の建物の造り。

基礎の調査項目としては下記の種類があります。

  1. 基礎の強度を測定する
  2. 鉄筋の有無を判定する
  3. クラックの有無を調査
    クラックの幅と長さと深さの3点を計測する
    クラックの種類を判別する
    クラックの原因を特定する(不同沈下・施工不良・中性化・乾燥収縮・地震・気象)
  4. 基礎の安定度を測定する
  5. フーチング幅を測定する
    基礎の深さを測定する
  6. 換気口の劣化や損傷を調べる

上記以外には、基礎と犬走りや階段などとの接合箇所のチェックや、蟻道(白蟻の通路)のチェックや、雨染み跡のチェックなども目視で行います。
因みに雨染みの跡がある場合は、建物内部に雨漏りが起きている可能性もあります。

基礎のクラックは一般的に「割れ幅」や「長さ」や「深さ」で分類されます。

  1. ヘアークラック(幅0.3㎜以下・深さ4㎜以下)
  2. 構造クラック(幅0.3㎜以上・深さ4㎜以上)

ヘアークラックは構造上問題ありませんが、定期的にクラックの幅や長さをチェックして下さい。 構造クラックの場合には、状況に応じた補修や補強が必要です。

他にも危険な基礎のクラックとしては
  1. クラックが基礎の上から下まで縦断している
  2. クラックが水平方向に延びている
  3. 近い範囲にクラックが集中して発生している 等の場合には、仮にヘアークラックでも専門家に診断の依頼をお勧めします。
基礎にヒビ割れが発生する主な原因としては、
  1. 乾燥収縮
  2. 基礎のヒビ割れ原因で最も多いのが乾燥による基礎の収縮現象です。
    乾燥することで基礎(コンクリート)内部の水分が蒸発してしまい、乾燥したコンクリートが引っ張られてヒビ割れ(クラック)が発生してしまいます。
    特に夏場の高温時にコンクリートを打つと収縮クラックが発生しやすいので、高温時期の建築には注意が必要です。

  3. 不同沈下
  4. 地盤の弱い場所に建築されている建物や、地盤の強度が違う土地(盛土と切土)に建てられた建物が、年月が経過するごとに傾き始めて、建物の重量が不均等に基礎に掛かってしまう事により生じる負担が、基礎のヒビ割れを発生させてしまします。

  5. 地震
  6. 深度5~6のような大きな地震でなくても、地震が発生するたびに少しずつ建物が傾き始めると、一部の基礎への負担が大きくなりヒビ割れが発生してしまう事があります。

  7. 振動
  8. 近くで建築工事や土木工事が行われる際の振動が原因で、建物や基礎にヒビ割れが入る事があります。後から、工事業者にクレームを言っても聞き入れてもらえない場合が殆どです。近所で大規模な工事が行われる際は、前もって建物全体の写真を撮っておくと証拠としても使えます。毎日、家の前の道路を通るトラックや乗用車などの振動が原因で不同沈下に拍車をかけてしまうこともあります。

  9. 施工不良
  10. 建築時の施工方法に問題(強度不足・かぶり厚・砕石・捨てコン・表層改良など)がきちんと施されていない場合には、基礎にヒビ割れが発生する場合があります。

  11. 基礎コンクリートの中性化
  12. 本来、アルカリ性のコンクリートが長期間に亘って雨(特に酸性雨)にあたると、コンクリートのカルシウム化合物が徐々に酸化(中性化)してしまいます。コンクリートが中性化すると強度も下がり、内部の鉄筋に発錆が生じて膨張することが原因でヒビ割れが発生することがあります。

  13. 気温変動
  14. コンクリートは急激に温度が下がると収縮するので、それが原因でヒビ割れが発生する場合があります。
    水が氷になると体積が増えて膨張します。コンクリート内部に膨張の際の圧力を開放するスペースが無い場合は、コンクリートに凍結融解クラック(ヒビ割れ)が発生します。
    気温変動によるヒビ割れは、特に9月~11月頃に発生しやすいです。
    等が、挙げられます。

    基礎の補修や補強の対策としては
    1. クラックへの樹脂の注入や充填(Ⅴカットシール工法・ビックス工法)する。
    2. 補強用基礎の増打ちする。
    3. 強度繊維(アラミド繊維など)を貼り付ける。
    4. 基礎をジャッキアップさせてコンクリートを打ち替える。(地盤の下げ止まりが条件になる)
    5. 布基礎に耐圧盤を施してベタ基礎にする。(布基礎に掛かる荷重と湿気を減らす)
    等が、一般的な方法です。

換気口周りの劣化やヒビ割れ

基礎には常に建物の荷重がかかり続けています。
特に建物の重量が集中しやすい基礎の部分には、ヒビ割れが発生しやすいのです。
基礎の換気口周辺も、応力が掛かり易く構造クラックが発生しやすい箇所です。
計測
ヒビ割れ
ヒビ割れ
ヒビ割れ
鉄筋探査

基礎モルタル剥離

基礎のコンクリートや表面のモルタルが剥離や浮く原因は次のような原因が考えられます。
  • 表面のモルタルが剥離する。
  • 施工不良が原因でコンクリート内部に亀裂が生じ、地震などの振動で表面のコンクリートが剥がれる。
  • 基礎内部の鉄筋が腐食するのが原因で、鉄筋が膨張してコンクリートを押し上げて、コンクリートが剥がれる。
  • コンクリートの内部に塩化物が含まれていると、鉄筋を腐食させてしまいコンクリートに浮きや剥離を生じさせる。
  • コンクリート内部に含まれている水分が凍結することで膨張してコンクリートの表面にスケーリングが発生する。(最低気温が零下を下回る地域で起こる可能性が高い)
  • 基礎に許容量を超える荷重がかかり続けることで、劣化が進行して剥離や浮きが生じる。
  基礎の剥離や浮きを目視以外で調査する方法としては、下記のような方法があります。
  • 電磁波調査
  • コンクリートに電磁波を流して、その反射波の戻ってくる時間で、コンクリート内部の瑕疵や空洞を探査する。
  • 超音波調査
  • コンクリートの表面側と反対側に超音波の発信機と受信機をセッティングして、周波数の分布を測定することにより瑕疵のある部位を探査する。
  • 赤外線調査
  • 赤外線カメラで基礎コンクリート表面の温度を比べる事で、浮いている部位を発見する。
  • 打音調査
  • 打診探査棒で表面の音の違いを比べたり、表面をテストハンマーで叩いた音の違いで判断する。
剥離検査
剥離とヒビ割れと滲み
化粧モルタルの剥離
化粧モルタルの剥離

基礎の変色や退色

基礎に滲みが発生することがありますが、そのような場合には下記の原因が考えられます。

  • 地中の水分を化粧モルタルとコンクリートの隙間から吸い上げている。
  • 基礎の表面から雨水や散水を吸収している。
  • 建物の床下で漏水(水漏れ)が起きている。
  • 基礎周辺の日当たりが悪く湿度も高い。
  • 基礎の見えない個所(地中や床下)にヒビ割れ発生している。
  • 壁内に浸入した雨水が水切りから正確に排水されていない。
  • 基礎の下に水脈が通っていて、その水を吸収している。
  • 壁内の防水シートが正確に施工されていない。
  • 基礎の下の砕石(クラッシャン・切込砂利・切込砕石)の敷き詰め厚さが足りない。
  • 浴室や台所から漏水している。

一次的な滲みであれば問題ありませんが、滲みの範囲が拡大したり劣化や損傷が発生したりしてくる場合には、滲みの原因を調査したほうが良いかも知れません。

基礎に変色
基礎に変色
基礎に変色
基礎に苔
基礎の白華化
含有水分比率を測定

クラック(ヘアークラック)

ヒビ割れの幅が0.3㎜以下のものを、ヘアークラックと呼びます。 コンクリートの乾燥や湿潤による表面の膨張や収縮が原因でヘアークラックが発生する事が多いのですが、ヘアークラックは構造上問題の無いクラックで、耐震性にも影響は無いと言われています。 しかし幾ら小さなヒビ割れでも雨水が浸入する可能性はあります。 ヘアークラックの特徴は、主に下記の3点です。
  • ヒビ割れの幅が0.3㎜以下(紙が差し込めない幅)
  • 深さ(奥行)4㎜以下のヒビ割れ
  • 基礎の上から下までは届いていない長さのヒビ割れ

幾ら構造上問題が無いと言われているヘアークラックでも、近い距離に複数のクラックが発生している場合は注意が必要です。
定期的にヒビ割れの幅や長さを測定して、ヒビ割れが進行しているようなら詳しい診断や状況に応じた補修を御勧め致します。

ヘアークラック
ヘアークラック

縦方向のクラック(構造クラック)

基礎にヒビ割れを確認した場合

  1. ヒビ割れの幅
  2. ヒビ割れの長さ
  3. ヒビ割れの深さ
  4. ヒビ割れの方向
  5. ヒビ割れした部位
によって対処方法は違ってきます。

例えばそれはクラックが発生した原因にもよります。
  1. 建てた時からの構造上の問題で生じたクラック
  2. 地震や道路の振動や不動沈下(地盤沈下)によるクラック
  3. 増改築やリフォームなどの影響を受けて生じたクラック

  4. また、クラックの症状によっても違ってきます。
  5. 表面の化粧モルタルの剥離によるクラック
  6. 基礎コンクリートが中性化することで基礎の強度が下がり生じたクラック
  7. 内部の鉄筋が酸化したことが原因で生じたクラック
一概に、基礎のヒビ割れがあるだけでは対処する判断が出来ない場合も多くあります。
気になるヒビ割れを発見した場合には専門家による調査や診断を御勧め致します。

基礎の構造クラック
構造クラック
勝手口付近の構造クラック

横方向のクラック(横方向のヒビ割れ)

基礎のヒビ割れは縦方向に発生するものと横方向に発生するものがありますが、横方向のヒビ割れには構造的な欠陥がある場合があります。

基本的に収縮クラックが横方向に入る事はまずありません。それは基礎の上に建物が乗っているので、基礎には常に一定の力がかかっていて、上下で収縮するとは考え難いからです。基礎の横方向のヒビ割れは、収縮によるクラックではなく応力クラックである可能性があります。応力クラックは何らかの強い力が基礎に加わって発生します。

特に多い原因としてはコンクリートの中性化による鉄筋の腐食や沈みヒビ割れの可能性が考えられます。

応力クラックが発生していると、下記のような原因が考えられます。

  • 施工当時の基礎の造り方に問題があった。(施工不良)
  • 大きな地震で応力クラックが発生した。
  • 不同沈下等で地盤に変化が起きた。

つまり横方向のクラックをエポキシ樹脂やセメントで補修しても、根本的な原因が解決しない限り、再び基礎にクラックが発生したり断裂したりする可能性が出てきます。

横方向のヒビ割れが発生している場合には基礎の圧縮強度や中性化深度などの測定を御勧めします。

基礎にヒビ割れ
基礎にヒビ割れ
基礎に横方向のクラック
横方向のクラック

複数の方向にヒビ割れが発生

複数のヒビ割れが近い距離で発生している場合や、同じ場所で違う方向にヒビ割れが発生している場合には、ヘアークラックでも大きな劣化や損傷に繋がる可能性もあるので、ヒビ割れ原因の究明と補修が必要です。
同じ個所にヒビ割れが集中している場合は、その個所に許容量を超える負荷が生じている事が多く、不同沈下や施工不良の可能性も考えられます。

換気口周辺にヒビ割れ
ひび割れ
ひび割れ
基礎にヒビ割れ
複数のひび割れ

犬走りのクラック

建物の犬走りは雨水の影響を受けやすくヒビ割れが入りやすい箇所の1つです。
犬走りにヒビ割れが入るには、下記のような原因が考えられます。

  • 乾燥による収縮(収縮クラック)
  • コンクリートは施工時に打ち込んだ際に圧力で膨張しますが、そのあとコンクリートが硬化するに従って収縮してきます。(施工時の水分比率が高い場合に起こり易い)
    またコンクリートは温度変化により膨張と収縮が起こります。この膨張と収縮が犬走りのヒビ割れを発生させる原因の1つだと考えられます。(夏の終わり頃に施工すると発生しやすい)
  • 凍結によるヒビ割れ
  • 雨水の影響を受けやすい犬走りでは、凍結融解クラック(ヒビ割れ)が発生しやすい。 コンクリート内部に浸透した水が凍った時に、コンクリートが膨張してヒビ割れを発生させる。
  • 地盤沈下(不同沈下)
  • 地面の土が不同沈下で土砂が下ってコンクリートに負荷が掛かりヒビ割れが発生する。
  • 施工不良
  • メッシュや鉄筋が正確に施工されていないか、ケンタイト(黒い目地板)やエラスタイト(目地版)を施していない。

犬走りの劣化
犬走りの劣化
犬走りが断裂
基礎と犬走入りヒビ割れ

基礎の取合い(建て増し・打ち継ぎ・打ち増し)の劣化

基礎の打ち継ぎや建て増しをした取合いの部位は、非常にヒビ割れが発生しやすい箇所です。それは先に建てた建物の地盤が固まっているのに、後から建てた建物の地盤はまだ安定していないので、不同沈下が起こりやすい状況です。
また地震などの際に、既存の建物が揺れる周期と増築した建物が揺れる周期が共振しないことが多いので、取り合いの部分に負荷がかりヒビ割れが発生しやすい状況になります。 対策としては、

  • 接合部にケンタイト(黒い目地板)やエラスタイト(目地版)を施す。
  • 鉄筋で既築基礎と増築基礎を繋ぐ。
  • 既築建物と増築建物の地盤の硬度を合わせる。
  • 等が挙げられます。

隙間
ひび割れ
取合い個所にヒビ割れ
隙間
クラックの深さを計測

出隅のヒビ割れ

中古で住宅を購入する場合や建売の新築住宅を購入する際は建物外装の出隅や入隅のチェックが重要なポイントです。同様に室内も入隅と出隅は施工業者の技術の差が出やすい箇所なので要チェック個所の1つです。
通常、出隅基礎の上には通し柱が設置されているので、建物を支える上で非常に重要なポイントです。
また基礎や外壁の出隅は荷重が集中しやすい箇所ですが、他の部位に比べて劣化した場合に補修や補強の費用が高くなりやすいのが特徴です。
基礎の出隅や入隅にヒビ割れが発生した場合は、建物の傾きや基礎の強度測定をお勧めします。

罅割れモルタル剥離
亀裂
基礎の出隅に剥離
基礎の出隅に亀裂

換気口の劣化や瑕疵

最近の基礎はパッキン工法で換気を行っているので、換気口が無い場合もありますが、古い家屋の基礎の換気口は鉄で出来ている事が多いので、長期間経過すると鉄部が錆びてきます。
なるべく換気口の前には障害物を置かないようにして、錆が進行する前に塗装を施して下さい。
もし錆が発生して換気口に穴が開いてしまったら、ネズミや害獣やヘビなどが侵入してしまう可能性があるので、早期に塞ぐことをお勧めします。

鉄部が発錆
換気口が破損
換気口の破損と発錆
鉄筋の露出と発錆

基礎検査

基礎の状態を知るためには目視以外にも、各種の機材を使用すると客観的な判断が必要な場合に役立ちます。
建物の傾きや基礎の強度を測る事で、基礎のヒビ割れの原因究明や補修方法の選択などにも役立ちます。

基礎モルタルの剥離を探査
基礎モルタルの剥離検査
基礎の鉄筋探査
コンクリートのメタルチェック
鉄筋探査
基礎の鉄筋探査
基礎の鉄筋探査
含有水分比率を測定
土壌の湿度を測定
圧縮強度を測定
圧縮強度を測定
フーチング幅と深さを計測
布基礎の状態を計測
基礎のクラック幅を計測
硬度を測定
ヒビ割れの深さを計測
皹割れ幅を計測
皹割れ幅を計測

コンクリートの中性化進度調査

コンクリートが破壊される現象の1つにコンクリートの中性化があります。 コンクリートが中性化してしまうと、基礎の爆裂や剥離や破断や亀裂が発生してしまいます。
コンクリートが中性化するのは、
    1. コンクリートはアルカリ性なのでコンクリート内部の鉄筋は安定した状態を保ち続けています。
    2. 二酸化炭素の影響で徐々にコンクリートがアルカリ性から中性化していきます。(二酸化炭素と水酸化カルシウムの化学反応で、コンクリートが中性化していく)
    3. 酸化の影響で鉄筋に発錆が生じ始めます。
    4. 鉄筋が膨張し始めます。
    5. 鉄筋の膨張が原因で、コンクリートに浮きや亀裂や破断が生じます。
現在のコンクリートの中性化深度を測定することで、基礎の現状を把握することが出来ます。
コンクリートのコア
コアを抜き
コアを抽出
コアを取り出し
中性化深度の状況を判別
チェック表と比較
中性化を判定

基礎の充填(クラック幅0.3㎜~4.0㎜程度)の例

穴を開ける
掃除
クリックを取り付ける
クリックから流し込む
次の注入
ハンマーで叩き落とす
表面を整える
完成

基礎の補強の例

型枠を設置
完成

基礎補強の例

強度の下がった基礎の補強をする方法の1つとして、抱き合わせ基礎にする方法があります。基礎の強度自体が低くなってしまっていると、ヒビ割れを補修したりアラミド繊維を貼ったりしても十分な耐力を回復させることが出来ないからです。
更に効果的な対策として、既存の基礎をジャッキアップさせてコンクリートの打ち替えを施す方法がありますが、非常に費用が嵩むので基礎の増し打ち(抱き合わせ)を施す場合があります。

アンカーを施工
基礎アンカーに鉄筋を結束
木製型枠を設置
エアー抜きを実地
養生を実地
コーキング施工