基礎部分は建物を支える大変重要な役割があります。
屋根や外壁の塗装を施す際には必ず基礎の調査を行い、状況に応じて適切な処置や対策を施しましょう。
住宅の基礎部分は下記のように分類されます。
基礎の調査項目としては下記の種類があります。
上記以外には、基礎と犬走りや階段などとの接合箇所のチェックや、蟻道(白蟻の通路)のチェックや、雨染み跡のチェックなども目視で行います。
因みに雨染みの跡がある場合は、建物内部に雨漏りが起きている可能性もあります。
基礎のクラックは一般的に「割れ幅」や「長さ」や「深さ」で分類されます。
ヘアークラックは構造上問題ありませんが、定期的にクラックの幅や長さをチェックして下さい。 構造クラックの場合には、状況に応じた補修や補強が必要です。
他にも危険な基礎のクラックとしては基礎のヒビ割れ原因で最も多いのが乾燥による基礎の収縮現象です。
乾燥することで基礎(コンクリート)内部の水分が蒸発してしまい、乾燥したコンクリートが引っ張られてヒビ割れ(クラック)が発生してしまいます。
特に夏場の高温時にコンクリートを打つと収縮クラックが発生しやすいので、高温時期の建築には注意が必要です。
地盤の弱い場所に建築されている建物や、地盤の強度が違う土地(盛土と切土)に建てられた建物が、年月が経過するごとに傾き始めて、建物の重量が不均等に基礎に掛かってしまう事により生じる負担が、基礎のヒビ割れを発生させてしまします。
深度5~6のような大きな地震でなくても、地震が発生するたびに少しずつ建物が傾き始めると、一部の基礎への負担が大きくなりヒビ割れが発生してしまう事があります。
近くで建築工事や土木工事が行われる際の振動が原因で、建物や基礎にヒビ割れが入る事があります。後から、工事業者にクレームを言っても聞き入れてもらえない場合が殆どです。近所で大規模な工事が行われる際は、前もって建物全体の写真を撮っておくと証拠としても使えます。毎日、家の前の道路を通るトラックや乗用車などの振動が原因で不同沈下に拍車をかけてしまうこともあります。
建築時の施工方法に問題(強度不足・かぶり厚・砕石・捨てコン・表層改良など)がきちんと施されていない場合には、基礎にヒビ割れが発生する場合があります。
本来、アルカリ性のコンクリートが長期間に亘って雨(特に酸性雨)にあたると、コンクリートのカルシウム化合物が徐々に酸化(中性化)してしまいます。コンクリートが中性化すると強度も下がり、内部の鉄筋に発錆が生じて膨張することが原因でヒビ割れが発生することがあります。
コンクリートは急激に温度が下がると収縮するので、それが原因でヒビ割れが発生する場合があります。
水が氷になると体積が増えて膨張します。コンクリート内部に膨張の際の圧力を開放するスペースが無い場合は、コンクリートに凍結融解クラック(ヒビ割れ)が発生します。
気温変動によるヒビ割れは、特に9月~11月頃に発生しやすいです。
等が、挙げられます。
基礎に滲みが発生することがありますが、そのような場合には下記の原因が考えられます。
一次的な滲みであれば問題ありませんが、滲みの範囲が拡大したり劣化や損傷が発生したりしてくる場合には、滲みの原因を調査したほうが良いかも知れません。
幾ら構造上問題が無いと言われているヘアークラックでも、近い距離に複数のクラックが発生している場合は注意が必要です。
定期的にヒビ割れの幅や長さを測定して、ヒビ割れが進行しているようなら詳しい診断や状況に応じた補修を御勧め致します。
基礎にヒビ割れを確認した場合
基礎のヒビ割れは縦方向に発生するものと横方向に発生するものがありますが、横方向のヒビ割れには構造的な欠陥がある場合があります。
基本的に収縮クラックが横方向に入る事はまずありません。それは基礎の上に建物が乗っているので、基礎には常に一定の力がかかっていて、上下で収縮するとは考え難いからです。基礎の横方向のヒビ割れは、収縮によるクラックではなく応力クラックである可能性があります。応力クラックは何らかの強い力が基礎に加わって発生します。
特に多い原因としてはコンクリートの中性化による鉄筋の腐食や沈みヒビ割れの可能性が考えられます。
応力クラックが発生していると、下記のような原因が考えられます。
つまり横方向のクラックをエポキシ樹脂やセメントで補修しても、根本的な原因が解決しない限り、再び基礎にクラックが発生したり断裂したりする可能性が出てきます。
横方向のヒビ割れが発生している場合には基礎の圧縮強度や中性化深度などの測定を御勧めします。
複数のヒビ割れが近い距離で発生している場合や、同じ場所で違う方向にヒビ割れが発生している場合には、ヘアークラックでも大きな劣化や損傷に繋がる可能性もあるので、ヒビ割れ原因の究明と補修が必要です。
同じ個所にヒビ割れが集中している場合は、その個所に許容量を超える負荷が生じている事が多く、不同沈下や施工不良の可能性も考えられます。
建物の犬走りは雨水の影響を受けやすくヒビ割れが入りやすい箇所の1つです。
犬走りにヒビ割れが入るには、下記のような原因が考えられます。
基礎の打ち継ぎや建て増しをした取合いの部位は、非常にヒビ割れが発生しやすい箇所です。それは先に建てた建物の地盤が固まっているのに、後から建てた建物の地盤はまだ安定していないので、不同沈下が起こりやすい状況です。
また地震などの際に、既存の建物が揺れる周期と増築した建物が揺れる周期が共振しないことが多いので、取り合いの部分に負荷がかりヒビ割れが発生しやすい状況になります。
対策としては、
中古で住宅を購入する場合や建売の新築住宅を購入する際は建物外装の出隅や入隅のチェックが重要なポイントです。同様に室内も入隅と出隅は施工業者の技術の差が出やすい箇所なので要チェック個所の1つです。
通常、出隅基礎の上には通し柱が設置されているので、建物を支える上で非常に重要なポイントです。
また基礎や外壁の出隅は荷重が集中しやすい箇所ですが、他の部位に比べて劣化した場合に補修や補強の費用が高くなりやすいのが特徴です。
基礎の出隅や入隅にヒビ割れが発生した場合は、建物の傾きや基礎の強度測定をお勧めします。
最近の基礎はパッキン工法で換気を行っているので、換気口が無い場合もありますが、古い家屋の基礎の換気口は鉄で出来ている事が多いので、長期間経過すると鉄部が錆びてきます。
なるべく換気口の前には障害物を置かないようにして、錆が進行する前に塗装を施して下さい。
もし錆が発生して換気口に穴が開いてしまったら、ネズミや害獣やヘビなどが侵入してしまう可能性があるので、早期に塞ぐことをお勧めします。
基礎の状態を知るためには目視以外にも、各種の機材を使用すると客観的な判断が必要な場合に役立ちます。
建物の傾きや基礎の強度を測る事で、基礎のヒビ割れの原因究明や補修方法の選択などにも役立ちます。
強度の下がった基礎の補強をする方法の1つとして、抱き合わせ基礎にする方法があります。基礎の強度自体が低くなってしまっていると、ヒビ割れを補修したりアラミド繊維を貼ったりしても十分な耐力を回復させることが出来ないからです。
更に効果的な対策として、既存の基礎をジャッキアップさせてコンクリートの打ち替えを施す方法がありますが、非常に費用が嵩むので基礎の増し打ち(抱き合わせ)を施す場合があります。