床 下

床 下

床下の調査

普段、建物の床下チェックする機会が少ないので、確認を怠りがちになりますが、健全な建物の状態を維持する為には定期的な点検や検査が必要です。

含水率を測定

基礎のヒビ割れ

床下に発生しているヒビ割れは発見されにくいので対処や対策が施されないまま放置されている事が多いのが現状です。 床下の基礎にヒビ割れを確認した場合には、下記の点に注意してヒビを測ります。
  1. ヒビ割れの幅
  2. ヒビ割れの長さ
  3. ヒビ割れの深さ
  4. ヒビ割れの方向
  5. ヒビ割れした部位
次にヒビ割れが発生した原因を探しながら対処方法を考えていきます。
  1. 建てた時からの構造上の問題で生じたヒビ割れ
  2. 地震や道路の振動や不動沈下(地盤沈下)によるヒビ割れ
  3. 増改築やリフォームなどの影響を受けて生じたヒビ割れ
一概に、基礎のヒビ割れがあるだけでは対処する判断が出来ない場合も多くあります。 気になるヒビ割れを発見した場合には専門家による調査や診断を御勧め致します。
床下の基礎強度測定
構造クラック
滲みとヒビ割れ
基礎にヒビ割れ
基礎にヒビ割れ
基礎にヒビ割れ

基礎の滲み

基礎には様々な原因で滲みが発生する事があります。

滲みが発生する要因として考えられるのは、
  • 地面の水分や雨水を吸い上げて滲みになる。
  • 白華現象で滲みが浮き出てくる。
  • 浴室や台所やトイレの漏水が基礎に滲みてくる。
  • 雨水が防水紙の裏側に浸入して基礎まで流れて滲みになる。
  • 土台や大引きが腐朽して基礎まで滲みが垂れてくる。
  • 等が挙げられますが、実際には他にも多数の可能性があるので、検査してみないと判断できません。

不明な滲みは建物の劣化にも繋がりますので、心配な滲みを発見した場合には検査してみては如何ですか?

白華現象
基礎パッキンから滲み
換気口に発錆
滲み
土砂と雨水の流出
白華(エフロレッセンス)現象

コールドジョイント

コンクリートの打ち継ぎ時間を超過して打設した場合に起こる現象

一定時間内にコンクリートを打設出来なかった際に、最初に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートの間に発生した層をコールドジョイントと呼びます。
コールドジョイントの層になっている個所は、隙間が発生していることが多く二酸化炭素や塩化物が侵入する可能性が高くなります。
二酸化炭素や塩化物は鉄筋を腐食させる原因にも繋がるので、現在劣化が生じていなくてもコールドジョイント部分は定期的な経過観察が必要です。

コールドジョイントが発生
コールドジョイントが発生
コールドジョイントが発生
コールドジョイントが発生
不連続面の状態

基礎の劣化と不良

床下の基礎の状態は検査する機会がないと、どんな状態になっているか把握できないことが多いので、3~5年に1度くらいは床下の点検や検査が必要です。

欠陥とは呼べない程の微細な瑕疵から、建物に重大な影響を及ぼす瑕疵まで様々なものが存在します。
また人間の身体と同様に施工当初は健全な状態でも、時間が経過するとともに徐々に劣化が進行することもあります。
特に基礎の欠陥や劣化は建物の寿命にも影響してきますので、不安を感じるような現象が発生したら、早めの検査をお勧めします。

基礎が不足
鉄筋の露出と発錆
基礎のジャンカ
基礎に束柱が埋設
基礎の針状結晶
鉄筋の発錆と漏水
耐圧盤の亀裂

鉄部の発錆

床下の接合金物に発錆が生じると、接合部の強度が下るのは勿論ですが、基礎の内部の強度にも影響を及ぼす可能性があるので、安易には考えられない劣化でもあります。
木材の接合部の錆は湿気(特に結露)によって発生する事が多いですが、その影響で木部が腐朽する可能性も出てきてしまいます。更にはシロアリやドブネズミなどの害獣や害虫を呼び込む原因にもなります。
また基礎の鉄筋やアンカーボルトに錆が発生すると、鉄筋の膨張で基礎コンクリートが剥離や破壊される可能性もあるので、何らかの対策を施す必要があります。
鉄部の錆を抑えるためには、劣化状況を考慮して下記のような対策が必要です。

  • 瑕疵や劣化部位に適切な補修を施す。
  • 床下の湿度や温度を調整して、健全な環境を保つようにする。
  • 床下の換気機能を上げる。
  • 基礎が布基礎の場合は、耐圧盤(ベタ基礎)を施す。
  • 床下の清掃を行い、不必要な廃材や害虫の死骸などを片付ける。
  • 木部に防腐剤や防虫剤を塗布する。
  • 錆びた接合金物を交換する。

接合釘に発錆
鎹は発錆
アンカーと鉄筋が発錆
固定されていない状態
基礎が破壊される可能性
アンカーボルトに発錆
土台と接合されていない
接合金物(鎹)に発錆
発錆したアンカーボルト

詰め木(くさび)

通常は基礎の上に土台が設置されます。その上に大引きが設置され、更にその上に根太が設置されます。根太の上に床の下地材(合板)が敷かれて、フローリングや畳が設置されます。
それぞれの建材を接合する際に、天端が揃っていないと隙間が生じてしまいます。
その隙間を埋める為にくさびを打ち込む場合があります。
但、くさびは地震や生活の振動で外れる可能性が出てきます。
それが建物の倒壊に繋がる可能性は低いですが、床鳴りする原因にはなります。

くさびが打たれるのには以下のような原因が考えられます。
  • 建築会社がプレカット建材を使用しなかった。
  • 職人が留め釘の選択を間違えた。
  • 職人が天端を揃え損なった。
  • 建物完成後に不同沈下や漏水で地盤が下がったのでくさびで高さを調整した。
  • 床鳴りがするので束柱や土台にくさびを打って床を安定させた。
くさびが外れないような対策としては下記のような方法があります。
  • 鋼製束を設置する。
  • くさびではなく抱き合わせ材(木材やコンクリート)で補強する。
  • 金物で補強する。
  • 外れにくい調整くさびと交換する。
ブロックが使用
小柱(楔)で支えている
楔(詰め木)が込められている
根絡みの外れ
束柱と束石(礎石)の隙間
基礎と土台が腐朽
含水率を測定

束 柱(床束)

束柱は床下で大引きを支える為に使われています。一般的な束柱を設置する間隔(ピッチ)は、3尺(900㎜)~1m程度です。

束柱には主に下記の3種類のタイプが存在します。
・木製の束(一般的)
・プラスチック製の束
・鋼製の束
プラスチック製束や鋼製束は高さの微調整が簡単に出来るので楽に施工できるのが特徴です。
木製束は施工前に十分に乾燥させたものを使わないと、施工後に乾燥すると木が痩せて隙間が生じてしまう事があります。
束柱が正確に施工されていないと、床鳴りや床の軋みや撓みの原因になることがあります。束柱は不同沈下や地震などの振動で傾いたり浮いたりずれたりすることもあるので、床が不安定な状態になったら、まずは床下の束柱の状態を確認して下さい。

測定
束柱が細い上に傾いている
束石に束柱が乗っていない
束石に地面に着いていない
設置個所がずれ
残材が使用されている
束柱と礎石の位置がずれている
すき間が生じている
すき間
束柱が設置無
束石が傾いている

大引きや土台の劣化

床下の土台や大引きは束柱等とは違い、腐食や劣化が進行した場合の補修費用も高額になってしまいます。
特に床下に湿気が溜まり易い場合には、防蟻対策だけではなく防湿対策や除湿処理などを施しておくと安心です。
定期的に検査しておくと役立つポイントは、

  • 大引きや土台の接合金物の状態
  • 木材の水平度や傾きの測定
  • 大引きや土台の含水率の測定
  • 床下の場所毎の温度や湿度の違いを測定
  • 木材強度を測定
  • 等を、3~5年ごとに測定しておくと安心です。

含水率24.5%を計測
含水率32%以上を計測
隙間が発生
サイズが違う
裂罅が発生
土台が正確に乗っていない
ずれている
土台が固定無

床の断熱材

住宅の床下にきちんと断熱材が設置されていないと、室内を暖房しても底冷えがおきてしまいます。
床下に断熱材が正常に設置されていないと光熱費も余計に発生してしまいます。
断熱材が外れていなくても、断熱材同士の間に隙間が生じると放熱してしまいます。
床下は普段点検することが無い場所ですが、床の底冷えや他の部屋との温度差を感じる場合は、点検をお勧めします。

断熱材の種類は下記の3タイプが一般的です。
  • グラスウール系の断熱材(綿のような素材がビニール袋に入っている。)
  • 発砲プラスチック系の断熱材(硬めの発泡スチロールが板状になっている。)
  • ウレタン系の吹付け断熱材(狭い部位や隙間に吹き付けるタイプの断熱材)
断熱材が落下するのには、下記のような要因が考えられます。
  • 根太に挟んであるだけで、留め付け金具(受け金具)で固定されていない。
  • 留め付け金具が外れてしまう。
  • 生活振動で外れてしまう。
  • 地震の振動で留め付け金具が外れる。
  • 大引きへのはめ込みが緩い。
含水率を測定(
断熱材が落下
断熱材が剥き出しで落下
断熱材が剥き出しで落下
断熱材が外れて
断熱材の欠落
断熱材の撓み

床下のカビ

床下にカビが発生するとシロアリの被害や木材の腐食の原因になります。
またカビが繁殖して床下から畳や押入れに発生する可能性も出てきます。

カビが発生するのは下記の原因が考えられます。
    床下の湿度が高い。(特に布基礎で地面の湿度が高い)
  • 床下で漏水している個所がある。
  • 換気口などから雨水が侵入している。
  • 住宅室内の湿度が高い。
  • 床下の空気が循環していない。
床下のカビ対策としては下記の対策が有効です。
  • 定期的に床下の除湿を行う。
  • 床下の空気循環をよくする。
  • 床下の地面が土なら、耐圧盤(ベタ基礎)にする。

因みに、床下に防湿材(調湿マット)や炭を敷いてもあまり効果は期待できません。
確かに防湿材や炭はある程度の水分を吸湿しますが、飽和状態になってしまうと、もうそれ以上は吸湿出来ません。吸湿した炭を定期的に床下から取り出して庭などで乾燥(湿気を排出)させてから、再び床下に敷くのであれば効果は発揮出来ます。しかし、そんな面倒なことを定期的に行うつもりがなければ、空気の循環するスペースを狭くしてしまうだけなのであまりお勧め出来ません。

含水率を測定
温度や湿度を測定
白カビが発生
白カビが発生
白カビが発生
白カビが発生
基礎と土台のバランス
基礎と土台のバランス
含水率測定

床下の補強例

床下の補強や補修は「建物の現状」や「現場の施工環境」や「建築条件」や「施主様の予算」などにより、状況に応じた補修や補強を施します。

例えば、
  • 『築50年の伝統工法の建物』と『築10年のベタ基礎の建物』
  • 『高さが60㎝の床下』と『高さが30㎝の床下』
  • 『洋室でフローリングの床下』と『和室で畳の床下』
  • 『20万円の予算』と『200万円の予算』
  • では、可能な補修方法や補強方法が違ってきます

ブロック基礎による床下補強例

施工前
施工後
施工後

大引きの補強例(補強予算の関係による処置)

1:ブロックを固定
位置を調整
セメントを流し込む
セメントで固める

ベタ基礎工事(伝統工法の住宅)

『施工環境』や『施工条件』や『建築物の状態』や『予算』等によって、工事の内容や手順が変わってきます。
例えば、下記のような条件により総合的な判断が必要です。

  • 玉石と礎石を交換できるか?
  • 建物にミキサー車やポンプ車を横付け出来る場所があるか無いか?
  • 躯体が劣化や腐朽しているか、ある程度健全な状態か?
  • 地盤が軟弱か強固か?
  • 大引きや土台の補強が必要かどうか?
  • 職人の作業スペースの確保が容易かどうか?
  • 施工期間(道路封鎖など)に期限があるかどうか?
  • 十分な予算が取れているか応急処置の延長程度の予算か?
  • 施工範囲はどの程度か?
  • 床を解体できるか、床下に職人が潜って施工しないといけない箇所があるか?
  • 特に床を解体できない上に、職人が作業する十分な作業スペースが確保できない場合には どうしても出来る事に限界があります。

施工内容や施工手順などで見解の相違が発生しない為にも、事前の現場調査や打ち合わせが重要なポイントになります。
固定

1:床下を解体して束柱にボルトを固定してT型金物も設置する。

ボルトを固定

2:束柱にボルトを固定する。

番線で緊結

3:柱に接合した金物と鉄筋を番線で緊結する。

緊結

4:束柱と大引きを接合ボルトで固定する。

5:束柱と大引きにT型金物を設置して、束柱と鉄筋を固定する

6:鉄筋と束柱の接合ボルトを番線で緊結する

鉄筋と接合ボルトを緊結

7:全ての鉄筋と接合ボルトを緊結する。

鋼製束

8:鋼製束を大引きに設置する。

9:床束に根絡みを設置して、束柱に防腐処理を行う。

床下の解体出来ない個所

10:床下の解体出来ない個所から、コンクリートを打ち込んでいく。

生コンクリートを打設後

11:生コンクリートを打設後に、バイブレーターを施して安定させる。

深さを測定

12:メジャーで耐圧盤の深さを測定(20㎝)

完成

13:完成