ベランダ・バルコニ

ベランダ

ベランダとバルコニーの劣化

ベランダや陸屋根等の直接雨水の影響を受け易い箇所の防水リフォームは、建物の耐用年数を延ばす上では非常に重要なリフォームだといえます。 毎年、弊社の雨漏れ箇所のトップ3に入る程、ベランダは漏水を引き起こす個所として上位に位置します。 特に屋根やベランダの下階層を居住スペースとして使用している場合には、漏水してしまうと家具や電気機器類等に影響を及ぼしてしまう事もありますので、現在漏水していなくても定期的な点検を御勧め致します。 一般的な防水方法としては、下記のような手段があります。
  • 歩行用防水塗装
  • FRP防水
  • シート(ゴム・塩ビ)防水
  • 防水モルタル
しかし先ずは、如何様な防水対策を施すかよりも、
  • 漏水した原因は何処にあるのか?
  • 具体的に何処から雨水が浸入しているのか?
  • 他にも漏水する可能性のある個所はあるのか?
を調べる事が重要です。 ベランダの漏水原因として多いのは、
  • 逆勾配による居住側への滞水からの浸水
  • 床や立ち上がり部分の経年劣化や亀裂や損傷やからの浸水
  • 排水口のジョイント部分からの雨水の浸入
  • 側溝や排水口のオーバーフローによる滞水
  • 取合いの接合箇所からの浸入
等が、原因として考えられます。
御自身で判断致しかねる場合には是非御相談下さい。

1:排水口

ベランダの排水口が詰まると漏水の原因になります。
特にベランダ床の下が部屋になっている場合は、注意が必要です。
また排水口の上部にオーバーフロー管が設けてあると、多量の雨水が発生して排出許容量を超えた場合には、屋外に排水できるので滞水や逆流を防ぐことが出来ます。

排水口が詰まる原因としては、
  • ゴミや植木鉢の土や落ち葉や昆虫などが詰まる。
  • 周辺の床と排水口との間で勾配が無くなる。
  • 床の防水が切れて雨水が流れにくくなる。
  • 排水口周辺に障害物(ウッドデッキ・観葉植物・椅子など)がある。
  • そもそも建築当時の施工にミスがある。
等が、あります。

排水口周辺は雨水が集中するので、雨漏りした場合には被害が甚大になる可能性があります。
排水口周辺に雨水が滞水し始めたら、雨漏りしていなくても塗装や防水などの対策を施しましょう。

排水口周辺の滞水

2:ベランダの床部

ベランダの床面は人が歩いたり物を置いたりしている事が多いので、建物の中でも非常に 傷みやすい箇所だと言えます。
ベランダの床勾配(傾斜)は1/50(50㎝で1㎝の高さ)以上必要だと言われていますが、長年使用しているうちに勾配が緩くなってきたり変形したり、施工時から規定の勾配が取られていない場合があります。
また一般的なベランダ床の防水期間は約10年間ですが、使い方次第ではそれよりも早く劣化が進行してしまいます。

少しでも長く防水効果を持続させる為には、下記の点に注意して下さい。
  • 重量物を置かない。
    特に物干し台や物置などの重量物は床面を傷めやすいので、出来ればベランダには置かない方が良いでしょう。
  • 水が必要なものを置かない。
    また鉢植えの観葉植物などの水が必要なものを置くのも、あまりお勧め出来ません。
  • 水の流れを遮るものを置かない。
    ウッドデッキを置いてしまうと、ウッドデッキの下側に滞水しやすい環境が出来てしまいベランダの床の劣化を早めてしまいます。
  • 床を傷めやすい靴で歩かない。
    靴やサンダルの裏が木や硬い素材で出来ている物で歩かないようにしましょう。
床にクラック
苔や黴が繁殖
無数のヒビ割れ
発黴と漏水滲み
床板の交換と補修
で黴や苔が繁殖

3:ベランダの側溝(排水溝)

ベランダの側溝は雨が降ったときに雨水を排水する為の役割を果たしています。
側溝の重要な目的は、ベランダに降った雨水を滞水させずに排水口まで放出することです。
排水溝は1/100(1mで1㎝)以上の勾配が必要とされていますが、施工時に規定の勾配が取れていない場合もあるので、滞水しやすい場合は傾斜の検査が必要です。

側溝に長時間に亘り、雨水が滞水してしまうと、
  • 苔や黴が発生
  • 塗膜の剥離や劣化
  • ヒビ割れや亀裂の発生
  • 退色や色褪せ
  • 階下への浸水による雨漏り
等が、おきてしまいます。
ベランダの側溝はいつでも目視できる場所なので定期的にチェックするようにして下さい。そして不明な点や瑕疵などを発見した場合は、気軽に御相談下さい。
側溝の劣化状況
側溝の劣化状況
側溝に苔が発生

4:ベランダの立ち上がり(防水層)

ベランダの立ち上がりは、床と手摺り壁や外壁との取り合い(接合箇所)になるので、負荷が掛かり易く劣化しやすい箇所でもあります。
立ち上がり部分に劣化があると、雨漏り原因に繋がりますから定期的にチェックして下さい。
目安になる立ち上がり(防水層)の高さは、手摺り壁(排水溝側)に250㎜以上で建物側に120㎜以上必要だと言われています。(瑕疵担保保証の基準値)
特に建物側(履き出しサッシの下側)は、人が出入りするので低いほど生活には便利で楽ですが、雨仕舞を考えると120㎜以上は必要です。
ベランダ立ち上がりの高さは、誰でも簡単に測定出来ますから一度測ってみると安心です。
カビと苔が発生
変色
剥離
塗膜の浮き
塗膜の浮き
カビが発生

5:笠木と手摺り

ベランダの笠木から雨水が浸入すると、内側の木部が腐朽する可能性が出てきます。
また下の階で雨漏りなどが起こらなければ、長期間に亘り壁内に雨水が溜まり続けるで、誰も気付かないうちにベランダが傷んでしまう可能性があります。
初期の段階なら、コーキング剤を打てば納まりますが、劣化が進行した状態だと外壁材の交換から内部の補修工事まで必要になってしまいます。
ベランダやバルコニーの笠木と外壁の取り合い部分は、一番雨水が浸入しやすい箇所なので、コーキングの劣化や隙間には注意が必要です。
そのような状態にならない為にも、定期的に笠木や天板の状態はチェックするようにして下さい。
コーキング欠落
ヒビ割れ
手摺りに発錆
笠木天端に発錆
手摺りに錆が発生
発錆
取り付け根元に発錆
苔が発生
クラック

6:ベランダの外装

ベランダとバルコニーの違いは屋根が有るか無いかだけです。
屋根が有るのがベランダで屋根が無いのがバルコニーです。
1階に設けられるのがテラスで、2階以上に設けられるのがベランダやバルコニーです。
因みに、
ベランダ(veranda)はポルトガル語で、『建物から張り出した縁』
バルコニー(balcome)はイタリア語で『階上の外に張り出した露台』
テラス(terrasse)はフランス語で『盛り土』
デッキ(dec)はオランダ語で『居室外の平らな部分』
という意味を表す単語です。(他にも複数の意味はあります。)

全体をまとめると下記のようになりますが、濡れ縁とウッドデッキの違いは洋風か和風かだけだと言う方もいますし、バルコニーを2階のテラスと呼ぶ方もいますので、参考程度にお考え下さい。
名称 設置場所 屋根の有無 用途や特徴
ベランダ 無関係 有る 屋根が有る洗濯物を干す場所
バルコニー 2階以上 無い 屋根が無い階上の日の当たる場所
テラス 1階 無関係 日の当たる室外の生活空間
サンルーム 1階 有る テラスの一種で全面ガラス張りの部屋
縁側(くれ縁) 1階 有る 家の南側の出幅が短い廊下
濡れ縁 1階 無い 家の外の出幅が短い腰掛け
デッキ 1階 無い 出幅が長く、家と独立している空間

住宅のベランダは主に3タイプに分けられます。
  • 階下に居住スペースがあるベランダ
  • 階下には居住スペースが無いベランダ
  • 1階の屋根の上に設置されているベランダ
それぞれのベランダにメリットやデメリットがありますが、長期間に亘り利用していくためには定期的なメンテナンスや検査が必要になります。
可視画像
亀裂が発生
出隅に亀裂
滲み
塗膜の剥離
苔が発生
苔が発生
床の隙間

7:ベランダの塗装例

ベランダ全体の高圧洗浄

ベランダの床や立ち上がりの防水処理の方法は幾つも有りますが、今回は歩行用防水塗装工事を御紹介致します。他にも塩ビシート防水やFRP防水などが有ります。又、陸屋根の状態にもより防水塗装にもコテ仕上げ仕様や吹き付け仕上げ等の仕様も御座います。
施工前の状態

1:施工前の状態

床面や排水溝周辺の清掃を行い目立つゴミを集めます。

2:施工前の状態

2:施工前の状態

旧塗膜が残っている場合や劣化が酷い場合や目荒らしが必要な場合などには壁面や床面にケレン作業を施します。
ケレン作業は状況に応じて、下記のような種類があります。

  • 薬品による旧塗膜の剥離処理や酸洗浄やブラスト処理を施す。(住宅では行いません)
  • 電動工具を使用して研磨する。
  • スクレーパーやワイヤーブラシやサンドペーパーなどで研磨する。
3:散水

3:散水

ベランダの高圧洗浄を行う前に簡単に散水を行います。 最初から高圧洗浄を行うと埃や汚れが飛び散り周辺を汚す可能性があるので、予め散水を行っておきます。
高圧洗浄中

4:高圧洗浄中(右側から左側に向けて洗浄)

 清掃や通常の洗浄では除去が難しい細かい汚れや埃などを高圧の洗浄機で洗浄していきます。この際に高圧洗浄機の水圧調整や水流選択が重要なポイントになります。

素材の状態に応じて水圧を考慮した高圧洗浄機を選択します。一般住宅であまり水圧の高い洗浄機を使うと、素地を傷める可能性があります。素材の状態に応じてバイオ洗浄などを施す場合もあります。

高圧洗浄の終了

5:高圧洗浄中

6:高圧洗浄の終了
6:高圧洗浄の終了
塗装する場所を乾燥養生の為に1~2日以上は空ける。
(天候と気温を考慮)

ポイント

高圧洗浄後に床面が乾燥しただけでは判断出来ない素材の劣化状態や吸収状況を考慮に入れ防水処理を開始するタイミングを計る必要があります。もし素材(外壁や床面)に水分が浸透してまっている状態で塗装を開始した場合、防水処理後に水分の逃道がなくなり防水層と床面の間に溜まりが生じて塗膜が膨らむ可能性があります。

7:雨樋の分解と養生
7:雨樋の分解と養生
外壁面と床面が乾燥しているのを確認後、養生と雨樋の分解を行います。
8:手摺り壁の隅と周囲を刷毛で塗装

8:手摺り壁の隅と周囲を刷毛で塗装

目地の劣化部分にコーキング剤(シーリング剤)を打ち増しします。

コーキング剤には主に下記の3種類のタイプのものが有ります。

  • ウレタン系のコーキング剤
  • 変成シリコン系コーキング剤
  • シリコン系コーキング剤(上から塗装出来ないコーキング剤)

変成シリコン系のコーキング剤の方が費用はかかりますが、耐久性や耐候性は高いです。

しかし一般的にはウレタン系のコーキング剤が使用されるケースが多いです。

目地の下地処理としては劣化状況と施工予算に応じた処理を施します。

  • 既存コーキング剤を撤去してから、新しいコーキング剤を打ち直す
  • 既存コーキング剤の上から、新たにコーキング剤を打ち増す
  • 既存コーキング剤を撤去したあと、バックアップ材も交換する。
  • 劣化がコーキングはそのままで、上から塗装する。
ローラーで塗装

9:手摺り壁部分をローラーで塗装(中毛ローラー使用)

塗装が終了

10:手摺り壁部分の塗装が終了

塗装が完成

11:手摺り壁面の塗装が完成

側溝の塗装

12:床の側溝の塗装(刷毛と短毛ローラーを使用)

塗装(刷毛)

13:ベランダの立ち上がり面の塗装(刷毛)

塗装(短毛ローラー

14:ベランダの立ち上がり面の塗装(短毛ローラー)

塗装(中塗り)

15:立ち上がり面と側溝面の塗装(中塗り)

中塗り塗装

16:ベランダ床面の中塗り塗装(中毛ローラー使用)

現場移動スペースの都合上、通常のローラー刷毛ではなく長柄を使用しました。

中塗り塗装(中毛ローラー使用)

17:ベランダ床面の中塗り塗装(中毛ローラー使用)

上塗り塗装

18:ベランダ床面の上塗り塗装(短毛ローラー使用)

上塗り塗装

19:ベランダ床面の上塗り塗装(短毛ローラー使用)

上塗り塗装

20:ベランダ床面の上塗り塗装(短毛ローラー)

塗装が修了

21:床面と側溝の塗装が修了です。

塗装が完成

22:ベランダ床面と側溝の塗装が完成です。

塗装完了

23:排水口周辺の塗装完了です。

8:ベランダ床の塗装例(滞水の補修)

施工前

1:施工前のベランダの床の状態

ベランダの床に殆ど勾配が無いので、雨が降ると常に滞水する状態になっている。

洗浄後

2:高圧洗浄機で洗浄後の状態

下地を傷めないように、可能な限り低い水圧で時間をかけて黴や藻を除去する。

防水処理

3:排水口の防水処理を施す

排水口のストレーナー受けを外して、排水口周りに防水処理を施します。

下地処理

4:床面に下地処理を施す

床面と側溝が乾燥したら、プライマーを塗り表面の密着性を上げる。

5:モルタルで勾配を付ける(赤の矢印)

降雨の際、側溝や床面に長時間滞水しないように床面に勾配を付ける。

防水塗料を塗る

6:ローラー刷毛で防水塗料を塗る

モルタルが乾燥したら、防水塗装を施す(下塗り・中塗り・上塗り)

完成

7:完成した状態

最初に外したゴミ受けを取り付けて、更にその上から塗装して完成です。